『蟹工船』 M88

蟹工船



小樽の高校出身の小林多喜二の『蟹工船』が、ブームになっております。母の愛は偉大です。愛の深さを感じてください。雑誌『致知』より-----------------------------------------------
 

蟹工船』という小説を書いた小林多喜二という作家がいます。この人は戦前、思想・社会運動を取り締まる特高警察に検挙されました。取り調べといっても実際には、竹刀やムチで打たれたり、投げられたりする毎日で、目は腫れ、口は裂け、髪の毛もずぼっと抜けるなどのひどい拷問でした。


多喜二はやがて東京・多摩の刑務所に入れられますが、北海道の小樽にいる多喜二のお母さんに、5分間だけ面会が許されることになりました。


字の読めないお母さんは、刑務所からの手紙を読んでくれた人に、「5分もいらない。1秒でも2秒でもいい。生きているうちに多喜二に会いたい」と訴えました。


貧乏のどん底だったので、近所の人になんとか往復の汽車賃だけを
借りて雪が舞う小樽を発ち、汽車を乗り継いで指定時間の30分前に
刑務所に着きました。看守がその姿を見て、あまりにも寒そうなので火鉢を持ってきました。


するとお母さんは、「多喜二も火にあたっていないんだから、私もいいです」と、火鉢をよたよたと抱えて面会室の端に置きました。今度は別の看守が朝に食い残したうどんを温め直して差し出しました。お母さんは車中、ほとんど食べていません。それでも、「多喜二だって食べてないからいいです」と、これも火鉢のそばに置きました。


時間ぴったりに看守に連れられて面会室に現れた多喜二は、お母さんを一目見るなりコンクリートの床に頭をつけ、「お母さん、ごめんなさい!」と言ったきり、顔が上げられません。両目から滝のような涙を流してひれ伏してしまいました。


わずか5分の面会時間です。言葉に詰まったお母さんを見かねた看守が、「お母さん、しっかりしてください。あと2分ですよ、何か言ってやってください」と言いました。ハッと我に返ったお母さんは、多喜二に向かって、この言葉だけを残り2分間繰り返したそうです。


「多喜二よ、おまえの書いたものは一つも間違っておらんぞ。お母ちゃんはね、おまえを信じとるぞよ」その言葉だけを残し、お母さんは再び小樽に帰りました。


やがて出獄した多喜二は、今度は築地警察署の特高に逮捕され、拷問によりその日のうちに絶命しました。太いステッキで全身を殴打され、体に何か所も釘か何かを打ち込まれ、亡くなったのです。もはや最期の時、特高がまだステッキを振り上げようとすると、多喜二が右手を挙げて、しきりと何かを言っているようです。


「言いたいことがあるなら言え」と特高が水をコップ一杯与えましたすると、多喜二は肺腑から絞り出すような声で言いました。「あなた方は寄ってたかって私を地獄へ落とそうとしますが、私は地獄には落ちません。


なぜなら、どんな大罪を犯しても、母親に信じてもらった人間は必ず天国に行くという昔からの言い伝えがあるからです。母は私の小説は間違っていないと信じてくれました。母は私の太陽です。母が私を信じてくれたから、必ず私は天国に行きます」そう言って、彼はにっこり笑ってこの世を去ったのでした。


お母さんは、字はひらがなぐらいしか読めません。したがって、多喜二の小説は一行も読んではいないのです


しかし、自分の産んだ子は間違ったことはしていない。かあさんはおまえを信じている、と言ってくれました。そういうお母さんに対し、多喜二は「母はオレの太陽だ」と言ったのです。


多喜二の葬式に参列した人から----------------------------


それまで、我慢に、我慢をしていたらしいお母さんの慟哭が聞えた。「どんなに、どんなに水が飲みたかったやら……誰も水も飲ませてやらずに!……ああいたわしい! いたわしい!……何の罪とがないものを! 敵かたきの中で! 敵かたきの中で!……運転手でも殺したのならどうされてもええが何の罪があって、何の罪があって!……鬼! 畜生!」

 
それは全く、無数の敵に対する老母の力一杯の、あらん限りの叫喚であった。僕は、この時のお母さんの言葉を、一字一句、はっきり覚えている。それは此処へ書いた通りだ。そしてこの言葉は、永久に僕の
記憶から去らないだろう。それ程強く、熱く、この言葉は僕の胸に灼きつけられたのだ。



9つの和 2枚入り [ 約10.5cm×15cm ]」

9つの和は、母の慈愛に通ずるもので、空海が唐から持ってきた胎蔵界の曼荼羅(まんだら)をイメージして書いております。1つの和の10倍以上のパワーがあります。深刻な病の方にお勧めいたします。痛みが和らぎ、改善されるとの認識でお考えください。事務所や商店・教室などの運気を変えるとか、汚れた空気を浄化するのにも役立つと思います。


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