思い込みを「手放す」 M8121

思い込みを「手放す」


 
U理論の本に、医者と患者の双方に互いの関係性のあり方についてのアンケートの分析があります。それによると、医者と患者には大きく、次の4つの段階の関係性があるそうです。

 
<レベル1>

 
取引の関係、医者は患者の故障している部分だけを治す、機械工の様な役割。これは、患者が訴える症状を医者が治すだけの段階です。


<レベル2>

 
医者が患者に是正を促す段階で、医者は、患者の悪い部分だけではなく、それを引き起こした患者の行動に注目します。そして、医者は患者に対して行動を改めるように指導します。例えば、「酒、タバコを減らしなさい!」「暴飲暴食は控えなさい!」「働きすぎは身体に良くありません!」などの生活指導は、この段階で行われます。

 
<レベル3> 

 
なぜ、患者がそのような行動をとるのか、医者は患者と一緒になって考える段階。このレベルでは、医者はコーチであり、患者が行動の背後にある考え方を検証できる環境をつくります。ある患者は、「人生を贈り物だと思わない時、病気になり、考えさせられるんです。」そして、多くの患者からおなじような言葉が聞かれました。「人生がこんなに大事だなんて気づきませんでした。当たり前だと思っていたんです。」


<レベル4>

 
このレベルはさらに深い段階で、「なんとも表現できない、しかしあえて言葉で表現するならば、何か大きなものと繋がったような感じがする」と表現されます。医者と患者がお互いに深いところで繋がっているという感覚になり、薬の効果などではなく、癒しの効果が発揮できて、患者も癒されるが、医者も癒される、思いもよらない全く新しいアイディアや解決策が生まれてくる事があります。

 
患者との出会いにより、医者も成長し、出会いに感謝する感覚が芽生え、「私は何者なのか、生きている目的は何なのか」といったものを、 患者と一緒に考えるというもので、その中で今までになかった望ましき未来が出現するのが、このレベル4なのです。

 
心を深めると、全く新しいアイディアが「降ってくる」状態になり、奇跡が起きて、魔法が起きるから望ましき未来が出現するのです。

  
このアンケートでは、現状の医者と患者の関係レベルは、95%以上が、レベル1か2で、そして、こうあってほしいと思う理想のレベルの95%がレベル3か4でした。患者も医者も、ひとり一人は、レベル3か4を望んでいるのに、全体としてレベル1か2にとどまっているのが現状なのです。

 
そのことをU理論の作者であるオットー・シャーマー氏が、ある会議の中で発表すると、会場からは「その医療界で起きていることは教育界でも起きている」「行政の世界でも同じだ」「農業も…」という声が次々に上がったのです。

 
つまり我々はほとんど全ての分野で、望んでいるものと全く違う現実を作ってしまっている、ということなのです。それはなぜなのか?思考プロセスをどのように変えれば、望むものと実際に作り出すものの解離をなくすことができるのか?オットー・シャーマー氏がU理論を発見した背景には、そんな問いがあったのです。

 
心を何段も深めてUの字の底に至ることをオットー・シャーマー氏が仏教や道教の真髄を簡潔な方法で再発見したのです。このレベル4に到達することが、この複雑な医療関係者と患者の関係を解きほぐす鍵となるのです。アインシュタインの言葉に、「問題をつくり出したのと同じレベルの思考では、その問題を解決することはできない。」とあります。まさに、レベルを深くすることが重要であることがわかるのです。


話しが変わりますが、降龍についての質問も重なってありました。それはどういう意味で、理解できますか?という質問でした。降龍については、2007年の9月から10月にかけて書いてあり、その前後3ヶ月くらいを読んでいただければご理解できると思います。命数の奥義の、六徳→虚空→清浄→阿頼耶→阿摩羅→涅槃寂静が、降龍に至る発端ですから、命数に至る物語も、より深く把握できると思います。3年前のことですから、最近読まれた読者の方には戸惑いますね。

 
ところで、先ほどのU理論ですが、レベル4に至れば医療ばかりかあらゆる分野でも問題の解決ができて望ましい未来の出現が可能になる!と、本には書いてあります。けれども、Uの底=心の深奥に至る具体的な方法論は瞑想以外に詳しく書かれておりません。神田昌典氏は、日本でのU理論の推奨者ですが、U理論には瞑想以外に具体的な方法論がないので「全脳思考」という本を書かれたものと思われます。

 
「全脳思考」の本の中でも今後の企業の活動においてもU理論のレベル4まで至ることが生き残る鍵になる!と書いてあります。この本は450ページもあり、確かにその方法論はたくさん紹介されていますが、たくさんありすぎて、神田さん特有の西洋の学者の様々な理論の寄せ集めになっていて、何をどのようにすれば良いのか?素人には難しいところがあります。

 
「降龍」は、U理論のためにできたものではありませんが、誰もが簡単に心の奥のUの底に至ることができます。U理論での心の底に至る証は、幸福感になり、シンクロ現象が頻繁に起きることであります。「降龍」の実践でも同じ現象が起きるので「降龍」がU理論のレベル4へ至る実践になるのです。


先ほどのU理論の続きになりますが、レベル2とレベル3の間には深い溝があります。どうすればレベル2で終わらせることなく、レベル3や4に到達できるのか?U理論では、「手放す」ことによって、レベル4に到達できるとあります。何を手放すのでしょうか?医者は、患者の話を少し聞いて、すぐに、今までの経験に当てはめて、これはこのような病気の症状だ、とか診断するためにはこのような道筋しかない、と考えがちです。

 
自分の経験にあったストーリーに、目の前の患者さんを当てはめて、誘導してしまうのです。まずは、この思い込みを「手放す」ことが大切になります。このことは、いわゆるロジカルシンキングにおいて、ゼロベース思考と言っているものと同じになります。

 
U理論のレベル3、4に入っていくためには、共感し、手放すことが大切なのです。ですから「降龍」の実践も、今まで持っている常識や固定観念を手放し、感謝を深めて、純粋な愛に共感して実践することが大切
なのです。